「都市を滅ぼせ」という本があります。中島正さんという方が書かれた本です。中島さん は、農業を営まれていましたが、執筆活動も熱心で、江戸時代の哲学者、安藤昌益にも造 詣が深い方でした。2017年、96歳で亡くなっています。
この本を読んで、最初に感じたのは、なんと小気味の良い文章か、と。最初に執筆された のは、多分70台、再版本を加筆した時は、90を超えていたと思うのですが、文章に全 く歳を感じさせない。実に、力があるのです。いや、これは、力がないと言えないことだ と思ったのです。
都市は、歴史的にも、支配者が支配するのに都合の良いシステム。江戸時代の哲学者、安藤昌益の言葉を持っていうならば、都市は、「不耕貪食(ふこうどんしょく)」、つま り、自分たちでは、何も作物を作らず、金の力で貪食を続ける。田舎がなければ、都市は 生きていけないが、都市がなくても田舎は生きていける、と一刀両断です。
私たちは、この便利な世の中で生きてきて、お金さえ出せば、なんでも手に入ると考える ようになりました。ニュージーランドに来る日本の若い人たちも、シャワーで水を使い放 題、電気も使い放題、全てのことに「飽食」することに慣れてしまっていて、ニュージーランド人から注意を受けることがあると思います。野菜なども、自分で作ってみればわか るのですが、自分で野菜を育てる人は、食べ物を無駄にしません。今の私たちの消費文明 は、都市文明です。
中島さんは、肥大化した都市は、恐竜と同じ運命を辿り、自ら崩れ去るであろうと予言し ていますが、私たちは、その前に、自らの手で、都市を滅ぼす必要も出てくるかもしれま せん。都市は、諸悪の根源と中島さんは、言い切ります。確かに、私たちは、都市がなく ても生きていけるのではないかと思うのです。